津波対策『自動車の車体を利用したイカダ』②

FRP樹脂で仕上げをしたら、浮上実験に入りたいと考えていました。
発泡ウレタン部分にガラス繊維のクロスを貼ってあるので、樹脂を塗るだけなのですが、車体を裏返さないと上向きの作業になり、つららが沢山出来てしまう心配があります。
そうなっては始末に負えないので、やはり車体の底部の形のFRPの型枠を造って設置する方が良いと思い直しました。
実は発泡ウレタンを充填する時、色々な隙間から固まる前の液体が漏れ出して、地面に大きな団子を沢山作って、発泡ウレタンをかなり無駄遣いしてしまっていました。

底部を覆う型枠があれば、作業も楽で材料の無駄も軽減できるでしょう。方針転換!
コンパネとダンボールで型枠を造りました。(すでにウレタンがついているので今回は目測です。)

FRP型に直角はふさわしくないそうなので、45度になる様角にプレートを貼っていきます

段ボールなので離型剤は使えないため、ポリシートで養生しました。
でもFRPの粘着力は想像以上に強くて、後でこれが失敗だったと思い知ることになります。

ガラスマットを敷き詰めます。

ローラーでFRP樹脂を塗り込んでいきます。

ポリシートにシワがあるので、空気が入って少し凸凹になりました。
型から抜き取りました。それほど強度は求めていないのでFRP一層です。
でも、よく見ると小さな穴が沢山開いているので、もう1層重ねる必要がありそうです。

ポリシートを剥せば完成の予定でしたが、ポリシートが薄過ぎたので、引っ付いてなかなか取れません。剥そうとすると千切れて粉々に、後で塗装をする予定なのできれいに剥さないとペンキが乗りません。やっぱりしっかした型を造って、離型剤を使うべきですね。

縦半分の型枠だったので、ひっくり返してもう片方も造りました。左右で1台分です。

前後から、片方ずつ挿入すれば、車体を吊り上げなくても車体の下に設置出来ます。
木枠などを利用し、車体の下に設置して密着させ、隙間に発泡ウレタンを注入すれば、発泡ウレタンには接着剤としての機能があるので一体化するでしょう。

最後の仕上げに掛かろうとしているとき、もみじ銀行様が全国初の知的財産支援と銘打って、特許申請のための弁理士費用を肩代わりして下さると言う事業にお誘いいただきました。失敗から生まれた発明を申請してみることになり、しばらく作業を中断し特許が下りるのを待つことになりました。

平成29年2月17日、優秀な弁理士さんのお力で拒絶理由通知書を受けることなく、1発で特許が下りました。さすがですね。
芦田・木村国際特許事務所の木村先生、末次先生、森先生、毛受先生、どうもありがとうございました。

特許第6090887号 『救命筏製造用型枠、救命筏の製造方法及び救命筏』
特許情報プラットホームに掲載されました。

ウィキペディアによると、「津波てんでんこ」と言う標語は、北海道南西沖地震(1993年)の奥尻島で、手をつないで避難していた母子3名が、すでに避難していた祖母の家に立ち寄ったため、わずかな時間差で命を落としたという痛ましい教訓から、津波災害史研究家である山下文男氏により、平成2年の第1回「全国沿岸市町村津波サミット」で提唱された言葉だとの事です。

とはいえ、『私が助けに行かなければ助かるすべが無い』という方の顔が浮かぶと、無理しても行ってしまう方もいるでしょう。せめて生存の可能性が残されていれば、津波てんでんこの標語に従いやすくなるのではないかと思います。津波てんでん号がその可能性を担える様、ぜひ実用化したいと考えます。

しばらく作業を中断してしまいましたが、約2年ぶりの作業再開です。
ポリウレタンを開封して2年放置してしまったので、膨らむかどうかの不安があり、もう必要ないくらい充填済みなのですが、エンジンルームに再投入してみることにしました。
また、発泡スチロールとうまく結合出来ればコストダウンにつながります。
2液型発泡ウレタンの反応熱で溶けたりしないか実験を兼ねてみました。

発泡スチロールは溶けることなく、しっかり結合してくれました。
これなら強度の必要ない部分は、発泡スチロールを詰めて発泡ウレタンを節約できそうです。

いよいよ底となるFRP型枠を取付けます。左半分の枠を車体に設置します。

車軸と干渉する部分を切り込みます。

ジャッキ等で車体の下にセットします。目測で造ったので不安もありましたが、とりあえず許容範囲かな?

サイドが波打つので木材で押さえます。

車軸周りや底等、発泡ウレタンが漏れだしそうな隙間を1液型スプレータイプの発泡ウレタンで埋めておきます。

発泡ウレタンを流し込むため、車体底部の水抜き穴を利用します。
内張りを剥すのは大変なので、マットに隠れる部分を切り開けました。
ウレタンに穴を開けて注ぎ口を作ります。

最初から型枠を造って発泡ウレタンを流し込めば楽だったのですが、車体底部にはすでに10cmくらいのウレタンの層が出来ているため、FRP型枠との隙間が1cm位のところもありました。これでは重力で流し込むのは無理がありそうなので、パイプに仕込んでエアーで打ち込むことにしました。

ところがパイプに仕込む時点で大失敗!
何度も経験してきていて自信あったのですが、気温が高すぎたのと念入りに撹拌してしまったため、パイプに半分充填した時点で膨張が始まり溢れ出してしまいました。

スピーディに作業するため手袋もしていなかったので、ウレタンだらけの手が膨張して行くのも経験しました。膨張する時の温度も体感し、
火傷するほどでは無かったので発泡スチロールとの併用に問題ないことは確認できました。
また、手についたウレタンが取れるには三日以上掛かりましたので、発泡ウレタンの接着力の強さも確認できたのが良かったです。
(負け惜しみです)ちょっとへこみましたが続けます。

充填を進めます。

FRPは1層のみにしたので、底の小さな穴から漏れ出します。
でも強固に定着するのでこのくらいなら許容できるでしょう。
2層にすれば完璧かな?

十分にウレタンが回らなかったところに補充しました。

細かいところは、高価だけどこれを使用しました。ノズルの中で2液が混合して噴射するタイプです。

     あふれたところはカッターナイフで削ります。

形を整え、カラー樹脂にタルクを混ぜて塗装しました。

      底です。

ほぼほぼ完成です。
タイヤを外してタイヤの裏を仕上げたら完成!浮上実験にかかります。

完成!  (長かった~ 6年かかりました)

マリーナにお願いして浮上実験に入ります。

車体重量が推定1,080kg、底面積約5.3㎡なので、

空車で計算上の喫水線は、底から20cm(タイヤの中央)

くらいになる見込みです。

5人乗車した場合350kg増加するとして、さらに7cmくらい

喫水線が上がるかな?浮力は十分でしょう。

 

浮上実験の前に、ドアから浸水する水位に印の赤テープを貼りました。この位置まではドアを開けても大丈夫、意外に敷居が高いので余裕がありそうです。

 

広島ベイマリーナ様が浮上実験にご協力下さることになりました。

2019年3月12日、ユニックに載せて出発!

 

マリーナに到着!

 

紐付きながら、浮かびました!喫水線はタイヤの半分くらいのところでした。もう少し沈ませた方が安定感があるかな?タイヤに車止めを兼用したおもりを付けたほうが良いかもしれません。

 

乗り込む許可がもらえたので、乗ってみてハッチから脱出してみました。ハッチは紐を引っ張ると開くように改造しています。

 

実験の様子を動画で公開しました。

(トップページに貼ったものと同じです。)

 

2023年7月16日現在、広島市中小企業支援センター様ならびに広島市産業振興センター工業技術センター様のお力添えを頂きながら事業化に向け鋭意開発中です。

2023年7月31日広島県公安委員会から古物商許可証を下付頂きました。第731032300013

これにより中古車オークションでイカダ用の中古車を入手できます。